異業種からエンジニアに転身 「理想の働き方」を問い続け、たどり着いた「フリーランス」として生きる道

「自分が本当に目指すものは何だろう?」「目的もなくダラダラと過ごす人生で良いのだろうか……」

こんなキャリアの悩みを抱えていたという、ITエンジニアの小池さん。ファーストキャリアは自動車メーカーの工場勤務でしたが、「本当にやりたいこと」を模索し、現在はフリーランスとして、業務効率化システムの開発やWebサイトの開発に携わっています。

現状に満足せず、つねに理想の働き方を自身に問い続けて着実にキャリアアップしてきた小池さんのこれまでのキャリアを振り返りながら、求められるフリーランスエンジニアであるために心がけていることや今後挑戦したいことを伺いました。

入江要さん
小池さん/ ITエンジニア/35歳・男性
高校卒業後に自動車メーカーの工場に就職後、ワーキングホリデービザでオーストラリアで1年アルバイト生活を行う。その後日本に帰国して職業訓練校でC言語、Java、JavaScript、Linuxなどのシステム開発について学び、ITエンジニアになる。SES企業に2年勤め、省庁向けWEBアプリ開発とオンラインストレージサービス開発に携わる。現在はフリーランスとして業務効率化システムの開発やWebサイトの開発に関わる。

 

工場勤務からワーキングホリデーを経て、エンジニアに転身

――小池さんはエンジニアになるまでにさまざまなキャリアチェンジを経験されていますが、これまでのキャリアの道のりを教えていただけますか?

(小池さん)私は新卒で自動車メーカーの工場に入社しました。4年ほど働き、仕事にも慣れてきたタイミングで「自分が本当に目指すものは何だろう?」と将来の働き方や生き方について真剣に考えるようになって……。悩んだ結果、違う仕事も経験してみたいと考え、思い切って退職を決意しました。

とはいえ、ほかにやりたい仕事があるわけではなかったので、仕事ではなくライフスタイルを軸に進路を考えてみたんです。幼いころから海外が好きで、海外で生活することに憧れていました。そこでワーキングホリデービザを取得して、オーストラリアで1年間生活することにしました。

――いきなり異国の地で暮らすことに不安はありませんでしたか?

(小池さん)心配性な性格ではないので、「なんとかなるだろう」と海外旅行の延長程度の軽い気持ちでしたね。10年前とはいえ、インターネットで実際にワーキングホリデーを経験している人の様子を知ることもできましたし、不安はありませんでした。

 

――オーストラリアでのワーキングホリデーを経て、どのようなきっかけでエンジニアを目指したのでしょうか?

(小池さん)オーストラリアの永住権を取得したいと考えたことがきっかけです。永住権は手に職があると取得しやすいと聞いたことがあり、自分でも目指せそうな職業を調べていたときにエンジニアという仕事と出合いました。

また、オーストラリア滞在中はシェアハウスに住んでいたのですが、そこでは毎晩のように日本人同士のパーティが繰り広げられていて……。異国の地にいるのに現地の人ではなく日本人と日本語で交流している様子を外から見ていて、「この人たちは何を目的にわざわざオーストラリアまで来たのだろう」とモヤモヤしました。私は同じようになってはいけない。彼らを反面教師にして、1日8時間の仕事を終えたあとは英会話やスキルアップできる学びの時間に費やすことを決めました。

その一環で『ドットインストール』というサイトでプログラミングを試しに学んでみたところ、続けるのが苦ではないと感じたんです! エンジニアを仕事にすることを決め、帰国後は本格的に開発スキルを学ぶために職業訓練校に通い始めました。

――1年間、職業訓練校に通いながらの生活はいかがでしたか?

(小池さん)アルバイトをしながら通っていたので、とにかく忙しかった思い出があります。つねに時間に追われているなか、授業態度が受け身になってしまったことを後悔しています。最初は当然まったく理解できない内容も多かったので「2進数や16進数を学んで何になるんだ」と思っていました(笑)。午前中は講義、午後は実習、課題とハードな毎日でしたね。

クラウドソーシングでプログラミング案件を受けてみたり、開発に関連するアルバイトを探したり、今振り返ると、エンジニアとしての価値を高めるためにできることはもっとあったのではないかと思います。ただ、コードを書くのは楽しかったので、忙しいなかでも時間を作ってコードを書く練習をしていました。

 

SESとフリーランスを経験してわかったエンジニアのリアル

――卒業後にはSES企業に正社員で就職。実際にエンジニアになってみて大変だったことはありますか?

(小池さん)開発期間や予算が足りなくなってしまう、いわゆる「炎上案件」に参加していたときは大変でしたね。スケジュールを巻き返すための対応に追われ、朝から終電まで、土日祝日を返上して働いたこともありました。

また、私は職業訓練校で開発に携わっている方々と関わってきたのでそこまで苦労はありませんでしたが、未経験からエンジニアになったときにつまづくポイントとして、意外と多いのは開発用語がわからないことでしょうか。言語やソフトウェアの扱い方だけでなく、「工数」の考え方や「レビュー」などチーム開発で当たり前のように使われる言葉もあらかじめ勉強しておくと、都度調べるストレスが減ります。

――SES企業を経て、フリーランスに転身したのはなぜですか?

(小池さん)エンジニアになる前から、もともとフリーランスになりたかったんです。フリーランスといえば、自由に働くことができて稼げるイメージがあり、できるだけ早い独立を目指していました。

2年ほど企業で経験を積んだタイミングで、エージェントに相談してみたところ「フリーランスとして活動できる」と背中を押してもらえたので独立しました。

 

――SESとフリーランスで働き方に違いはあるのでしょうか? 小池さんが感じたそれぞれのメリット・デメリットも教えてください。

(小池さん)SESに勤めていたときは一社員でしかなかったので、もちろん案件や関わる人を選べませんでしたが、フリーランスは良くも悪くもすべて自分で決められます。会社に所属するわけではないので、他部署からのプレッシャーを感じることもありません(笑)。

ほかにも、SESのときはクライアント先に常駐していましたが、今はフルリモートで働いています。もともと、フルリモート勤務はエンジニアになる前から期待していたことだったので叶ってうれしいです。働き方が自分に合っているうえに、収入も増えたので、思い切って独立して良かったと思っています。

一方で、自宅で1人で仕事をする生活が毎日続くなか、印象に残るような出来事が起こらないことは少し寂しいですね。出社していたころはまわりに人がいることで、良いことはもちろん、悪いこともありましたが、どれも思い出になっていました。

また、SESを経験したことで、業界の仕組みや開発の流れを理解できたことはありがたかったですね。業界の常識をわかっていないままフリーランスエンジニアとして活躍するのは難しかったと考えています。

――どのような人がフリーランスエンジニアに向いていると思いますか?

(小池さん)やりたいことや成長意欲がある人ではないでしょうか。フリーランスは自分から環境を変えない限り、見える景色が変わりません。現状に満足できないからこそ、自分で選んで行動しようと思える人は向いていると思います。

時代の流れなのか独立する人は年々増えていますね。しかし、会社でやりたい仕事ができていたり、もっと一緒に働きたいと思える仲間がいたりと、会社で勤めることに現状不満がない人は無理にフリーランスを目指す必要はないのではないでしょうか。会社員だからこそできる仕事や得られる学びもあると思います。

 

「スキルアップへの投資を惜しまない」この先も求められるエンジニアであるために

――フリーランスのキャリアを考えたときに、収入面で不安を抱く人も多いと思います。小池さんはどのように案件を獲得してきましたか?

(小池さん)現在携わっている案件の多くはエージェント経由や、別の案件でご一緒した方からの紹介です。基本的にはどの開発現場も人手が足りていない印象があるので、与えられた仕事をやり遂げられる人であれば案件獲得にはそこまで困らないと思います。

――仕事を紹介してもらえるフリーランスエンジニアには、どのようなスキルが必要だと思いますか? 小池さんご自身が心がけていることも教えてください。

(小池さん)バックエンド、フロントエンド、SQLへの理解など必要な技術力があることを前提に、仕事の基礎的なスキルでいえば、わからないときに自分で調べられる力でしょうか。エンジニアの仕事は多岐に渡っていて、扱う情報も目まぐるしいスピードでアップデートされていきます。当然、触ったことのない技術に出合うことや、解決したことがないバグに遭遇することもあります。

そのようなときに「できません」と言うのは簡単ですが、まず自分で乗り越える方法を本やインターネットから探してみること。助けになる情報が日本語で見つからなくても、英語で調べてみると出てくる場合もあります。調べた情報をもとに仮説を持って、トライアンドエラーを恐れずに取り組む姿勢が大切です。

また、納期を守ることもクライアントから信頼されるフリーランスであるために心がけています。難しい案件で自分の仕事を期限内にまっとうするためにも、日々勉強を継続してスキルアップへの投資を惜しみません。書籍だけでなく、今の時代は『Udemy』などオンラインの学習サービスも充実しているので、独学のハードルは昔よりもずっと低いですね。

 

――今後挑戦してみたいことはありますか?

(小池さん)機会があればプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダー、ブリッジエンジニアなど開発に関わるほかのポジションにも挑戦してみたいです。そのために必要となる折衝能力や英会話力を伸ばしていきたいと考えています。

直近の目標は月商100万円以上を達成すること。今の働き方でコンスタントに稼げるようになったら、ゆくゆくは自分でWebサービスを作って、クライアントワークだけに頼らない働き方を実現してみたいです。

 

エンジニア転職への第1歩は「理想の働き方」と向き合うこと

――エンジニアのどのような点にやりがいやおもしろさを感じていますか?

(小池さん)これまで手作業で行なっていたことをエンジニアの仕事を通して自動化できる点はおもしろく、効率化の気持ち良さを感じています。

エンジニアは日々コツコツと勉強してきたことやこれまでの苦労と積み重ねが、そのまま活かされる仕事です。チームで開発をしていると、ソースコードが動かず泣きそうになっている同僚を助けられるなど、自分の技術が誰かのためになっている実感がありますね。うまくいかず大変なこともありますが、技術と向き合った分だけ成果物のクオリティを上げられる点にやりがいを感じます。

 

――未経験からエンジニアになった小池さんが、キャリアチェンジするときに大切にしてきたことを教えてください。

(小池さん)つねに「今より悪くなることはない」とポジティブに進むべき道を選んでいます。私はファーストキャリアをなんとなく選んでしまっていたので、「この仕事がやりたいんだ」という気持ちや背負うものが何ひとつありませんでした。

SES社員からフリーランスに転身するときも、正社員よりもフリーランスのほうが自分に合ったライフスタイルで、より良く働けると考えていました。大切なのは自身の置かれている現状に気づけるか、より理想の働き方をするにはどのような道があるのかを日頃から考えていくことではないでしょうか。

――最後に、小池さんがこれから目指していきたい理想の働き方を伺えますか?

(小池さん)今はセキュリティの面でハードルがあるのですが、本来エンジニアはパソコンさえあれば時間、場所を問わず働ける仕事です。私も海外から早朝・深夜問わず働いてみたいという希望があります。1日6時間程度働いて、残りの時間は趣味や勉強の時間に費やす働き方が理想です。

また、格闘技をやっているので、1ヶ月間休みを取ってアメリカやブラジルのトレーニングジムを渡り歩いたり、ヨーロッパを周遊したり……そんな過ごし方もしてみたいです。フリーランスになったからこそ思い描ける働き方ですよね。

 

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